「広告やめませんか?」とっておきの武器を持って会議に乗り込みました
突破インタビュー その②

「広告やめませんか?」とっておきの武器を持って会議に乗り込みました

突破インタビュー、それは社内やクライアント、世間の常識といった壁を超えてきたクリエイターたちの物語。「無理だろ」「別案ないの?」そんな壁を突破してきた猛者たちに、エピソードをお聞きしました。
突破したクリエイティブ
【閲覧注意】雪道コワイ
今回取り上げるのは、冬用タイヤの訴求・啓蒙のために、2013年に公開された動画、「【閲覧注意】雪道コワイ」。※現在、限定公開中です 誰もが恐怖に震えたこの動画、「タイヤの広告と思われないのでは?」「クレームがくるのでは?」と、常識で考えるとクライアントのOKが出るはずもない企画です。 しかし動画を制作したBBDO J WESTの眞鍋さんは、壁を突破するため、とっておきの“武器”を用意していました…。実はあの動画で降っている雪は、予算の都合ですべてCGだったなど、裏側のお話も伺ってきました!
BBDO J WEST 眞鍋海里(コンテンツプランナー)

「雪道コワイ」はタイヤ販売会社オートウェイのPR動画として企画されたわけですが、クライアント側から「ホラーテイストにしてくれ」と言われたわけではないですよね?

もちろんです(笑)。最初はごく普通の、YouTubeで動画の前に流れる広告のお話でした。
ただ、僕はああいった広告の動画って好きじゃないんです。ユーザーからしたら「見たい動画があるのに邪魔された」って感じるじゃないですか。

正直に言うと邪魔ではありますが、WEBは広告で成り立っているところがあるので、ある意味仕方ないのでは?

そう、仕方ないんです。それなら広告そのものが見たい動画になればいい。おもしろいムービーであれば、それが広告かどうかなんて関係なく拡散されますから。そうなれば、あのちょっとお邪魔なTrueview広告のお世話にならなくて済みますし。

【閲覧注意】雪道コワイのワンシーン

なるほど!でも、それだけで「タイヤの広告をホラーにしよう!」とは思いつかないですよね

ネットでよく見られる動画っていうのは3種類あるんです。
①お色気・美女系の動画
②壮大・スケールの大きい動画
③衝撃動画
この3種類ですね。①のお色気や美女はイメージ的に適切ではない。予算が限られていたので②の壮大な動画も無理でした。でも③の衝撃動画なら、お金を掛けなくてもおもしろいものが作れる。それでホラーにしようと思ったんですよ。

初期の段階での絵コンテ(公開された動画とは若干異なっている)

そのアイデアをクライアントに提案するのは、かなり勇気が要ったんじゃないですか?

そうですね。でも普通の広告動画より絶対にこっちの方が良いという確信があったんです。それを理解してもらいたいと思って、綿密に企画書を作りました。
最初のページには「広告やめませんか?」っていうタイトルをバーンと入れて。その企画書を武器に、打ち合わせに臨みました。

「広告辞めませんか?」の企画書の一部

「広告やめませんか」ってすごい企画書ですね。どんな内容だったんですか?

「動画の前の広告はユーザーにとって邪魔です」→「なぜかというと、見たくないものを強制的に見せているから」→「それなら、自発的に見にきてくれるような広告にしましょう」→「そこで提案したいのが…」といった感じで、僕が考えてることを細かく書いていきました。理解されにくいことは自覚していたので、ロジックで固めた方がいいと思ったんですよ。

実際に企画書を見せた時、クライアントの反応はどうだったんですか?

クライアントのみなさんは説明を聞いてるあいだ…

こんな顔でしたね。

ただ説明が進むにつれて、どんどん前のめりになってきて、最終的に「これはおもしろいんじゃないか?」って言ってくれたんです。どうせならめちゃめちゃ怖い動画にしてほしいって、もうノリノリになってくれて。

突破の瞬間ですね! そこからは実際に撮影に入っていったんですか?

そうなんです…が、予算が本当に少なかったので苦労しました。例えば、あの動画で降ってる雪って全部CGなんですよ。遠くにロケに行くとお金がかかるんで。

撮影されたのは秋だったため、実際には雪は降っていなかった

えぇ~! そうだったんですか! 気づきませんでした。予算が低いって、どれくらいだったんですか?

数十万ですね。ただ、予算が少ないことが逆に良かったと今は思ってます。「高いカメラは無理だからハンディで」とか「粗がわからないように画面を暗くしよう」といった感じで調整してたら、それが逆に怖くなってくれた。

完成した動画をクライアントに見せた時、どんな反応でしたか?

仕事として見るわけですから、最初はみんな難しそうな顔してるんですよ。「どれどれ」みたいな。でも途中でみんなビクッてなるんです。それを見て、「よっしゃ~!」と思いました。クライアント側からも、これは当たるぞと。

動画自体は何百万再生もされて、海外でも有名になりました。広告としての効果はどうだったんでしょうか?

通常のキャンペーンに比べると、雪道コワイのページは20倍のアクセス数があったそうです。予想を遥かに上回るアクセス数でした。僕はクライアントの認知度向上を目標に掲げていたので、成功といっていいと思います。

20倍のアクセスがあったというキャンペーンサイト

最後にお聞きしますが、この前代未聞の広告動画を突破させたのは、どんな力だったのでしょうか?

正直さではないでしょうか。
「こっちの方が良い結果になる」と感じたのなら、黙っているより正直に伝えた方が誠実だと思うんです。判断するのは、我々でもなく、クライアントでもなく、ユーザーなので。ただしそれをクライアントさんにちゃんと理解してもらうためには、伝える方法は練りに練ったものじゃないと。なので、僕の場合は「広告やめませんか?」という企画書を作りそれを伝えました。

「ユーザーが見たくないものはつくらない。ユーザーがわざわざ見にきてくれるようなものをつくる。」どんな奇策より、受け側の気持ちに正直な企画が、一番強いと思います。

突破された人からメッセージ

雪道コワイのアイデアを聞いた時、驚きはしましたが、同時に「でも面白い!」と感じました。
ただ、最初の絵コンテが、かなりラフだったのに対して、完成品はとてもリアルだったので、正気に戻り、とんでもないものを世に放とうとしているのではと少し公開するのを迷いました。
公開後は、1日に何十回もBBDOさんと連絡を取りながら、SNS、YouTubeの評価をリアルタイムで監視し、いつでも消せるように準備してましたが、高評価が多かったので安心しました。

AUTOWAY 営業部 営業戦略室 岡本翔

【閲覧注意】雪道コワイ

■GOを出したのは・・・株式会社 オートウェイ

■突破したのは・・・株式会社 BBDO J WEST

タイヤ通販会社「オートウェイ」のスタッドレスタイヤ装着を啓蒙する目的で作られた【閲覧注意】系の動画。雪の日の道路は滑りやすい、事故が起こりやすいという"怖さ"を、ホラー動画を用いて伝えている。YouTubeでの再生回数は1,000万回以上に達している。(現在は公開終了)