子どもがマネしたらクレームが…「マネできないほどの映像美を作ります!」
突破インタビュー その④

子どもがマネしたらクレームが…「マネできないほどの映像美を作ります!」

突破インタビュー、それは社内やクライアント、世間の常識といった壁を超えてきたクリエイターたちの物語。「無理だろ」「別案ないの?」そんな壁を突破してきた猛者たちに、エピソードをお聞きしました。
突破したクリエイティブ
『シンフロ』Webコンテンツ(突破クリエイティブアワード2015 金賞受賞作品)
今回取り上げるのは、突破クリエイティブアワード2015において、金賞を受賞した作品。おんせん県おおいたをPRするために、大分県内のさまざまな温泉でシンクロをするというWebコンテンツです。元・日本代表選手が率いるプロのシンクロチームが、大分県の11箇所の温泉でシンクロを披露しました。
株式会社西広 久冨和寿

『シンフロ』は2015年にPR動画として制作されたんですよね?どういった経緯で久富さんが所属する西広が手がけることになったんでしょうか?

自治体が開催して20社ほどが参加した競合プレゼンで勝ち取りました。実はそのプレゼンに参加するのは2回目でした。1回目のプレゼンでは他社の提案した作品が採用されたんですよ。

では2度目の挑戦ということで胸に秘するものがあったんでしょうね。温泉でシンクロするというアイデアは、どうやって思いついたんですか?

1回目のプレゼンで採用された案というのが「ギャグもので、会話をメインにした作品」だったんです。だからその逆を行こうということで、歌ものとか……ダンスものとか?という話になりまして。そこから「じゃあシンクロナイズドスイミングは?」とアイデアが出てくるまでには、実はそんなに時間がかかってません。1時間くらいで会議が終わった記憶がありますね。

様々なボツ案を乗り越えて『シンフロ』を思いついたと思いますが、その瞬間の会議室は、どんな雰囲気だったんですか?「これだ!」っていう感じでした?

ボツ案はたくさん出ましたが「TM熱湯ワーク」とか「フロ(風呂)ジェクト」とか、言葉遊びレベルのものばかりでした(笑)。『シンフロ』も、そういった言葉遊びのひとつとして思いついただけなんで、「ああ、それ良いんじゃない?」みたいな反応だったかなぁ。「すごいアイデアだ!」という感じではなかったです。

あんなすごいアイデアなのに「よっしゃー!イケるぞ!」とはならなかったんですか。

プレゼンに1回落ちたことを引きずってたんで、自信はまったくありませんでした。とりあえずこれで進めてみようということになって、プレゼン用に簡単な合成で動画を作りまして。その映像を見た時に初めて「あ、イケるかも!」と思ったんです。

温泉でシンクロするというアイデアは、懸念点も容易に想像できます。社内で否定的な意見はありませんでしたか?

もちろんありましたよ!特に営業からは「子どもがマネして泳いだらクレームが来る」と散々言われました。ただこちらとしてはせっかく思いついたアイデアなので、「じゃあもっと良いアイデアを考えてくれるのか!?」と、クリエイターが言ってはならないセリフを使って押し通しました。

「子どもがマネしたらクレームがくる」は至極まっとうな意見ではありますよね。そこはプレゼンでも当然突かれる部分だったと思います。どう説得したんでしょうか。

プレゼンでは、ふざけているだけでは突破できない、とは考えていました。だから、アイデア自体はふざけてるけど、映像としては本気で美しい……つまりマネできないほど本格的なものを作ります!と力説したんです。大分県は以前からかなり尖ったPRをしていた県なので、意外にすんなり「実現できたらすごくおもしろそう」と言ってもらえました。

実現に際しては、やはり険しい壁が立ちはだかってましたか?

それはもう(笑)。まず場所がなかったんですよ。候補地として50ヶ所くらいの温泉をピックアップして、「撮影に使いたい」と交渉したんですが、非常に難航しました。「県のPRで」というところまでは「それならぜひ撮影していってください!」って言われるんですが、「シンクロしたいんです」と伝えた途端、「それは無理です」と。

でしょうね。その時点では『シンフロ』がどんな動画になるのか、どれくらい話題になるのか、というのは温泉の方にはわからないわけですから。

ものすごく断られ続けたんですが、なんとか11ヶ所の温泉には撮影許可が出まして。一息つく間もなく、じゃあ次は出演者を探そうと。最初はとりあえずダンスできる人、という条件で募集したんですね。

ダンスというのは、地上で踊る人たちのことですか?なぜ「シンクロできる人」という条件で探さなかったんでしょうか

「踊りの経験がある人なら、それを水中でやればいいだけなんだから大丈夫だろう」と甘く考えてたんです。ダンサーなら捜すのも簡単だし。ところが、やってみたら地上と水中で全然違うんですね~!誰一人まともにできませんでした(笑)

当たり前ですよ!

で、ちゃんとした経験者を捜すことになったんですが、「プールではなく温泉」「お湯なので熱い」「水深は50cm~100cm」と、ものすごく悪条件でした。それをどうにか引き受けてくれたのが、元日本代表選手・藤井来夏さん率いるシンクロチームだったんです。

シドニー五輪で銀メダルを獲った方ですよね。実際に撮影してみて、藤井選手は何かおっしゃってましたか?

「『温泉でシンクロ』という言葉からは想像できないほど、本格的な撮影なんですね!」と言われました。撮影に入ってからは、やはり熱いお湯ということ、そして水深が浅すぎることには苦労されたようです。ちなみに、浅い水深に慣れるために、子ども用のプールを借りて練習したんですよ。といっても、温泉によってひとつひとつ水深や形が違うので、とても苦労しましたね。

お湯の熱さ対策は何かしました?

撮影直前まで氷を入れたりしてみたんですが、ほぼ効果はありませんでしたね。そもそも撮影が終了したら一般のお客さんが入るわけですから、あまりぬるくするわけにもいかず。踊って頂いたみなさんは、熱さで全身ピンク色になりながら頑張ってくれました。11ヶ所を7日間で撮影したんで、スケジュール的にもキツかったと思います。

そのような苦労を重ねた結果、やっと撮影が終わって公開ということになったわけですが……7週間で100万アクセス突破とものすごい反響でしたね。

でき過ぎなくらいの結果でしたが、撮影させてもらった温泉地の方からも「良かったよ」と言ってもらえて、嬉しかったですね。話題になったおかげで、今はあの動画のロケ地を巡る観光ツアーもあるんですよ。

撮影許可を出してくれた温泉の方は先見の明があったということですね。

現在『シンフロ』は第2弾を公開中なんですが、撮影許可を撮るのはかなり楽になりましたね(笑)

昨年は突破クリエイティブアワードの金賞を受賞しましたが、周囲の反応や変化はありましたか?

突破した作品だけを集めた広告賞で金賞をもらったということで、社内でも「金賞獲ったんだって?」と声をかけられましたね。ただ、グランプリを獲れなかったのは悔しかったな……。いつか必ずリベンジします。

シンフロの続編『ゆけ、シンフロ部!』

突破された人からメッセージ

最初シンフロというご提案をいただいたとき、インパクトが強すぎて、クスッと笑ったのを覚えています。
制作に進んだ段階で、BGMが決まらない、出演者が決まらない、と色々検討することが多く、毎週定例会として意見をかわしながら打ち合わせをさせていただきました。
スタッフ全員が、手を抜かずに「真剣に」作るという意識で制作した結果、おふざけ動画ではなく、大分の誇る温泉を"魅せる”動画になったと思います。公開から1年経った今でも、大変好評いただいています。

大分県 企画振興部 広報広聴課 広報・報道班 青木葉子

『シンフロ』Webコンテンツ(突破クリエイティブアワード2015 金賞受賞作品)

■GOを出したのは・・・大分県

■突破したのは・・・株式会社 西広

おんせん県おおいたをPRするために、大分県内のさまざまな温泉でシンクロをするというWebコンテンツ。元・日本代表選手が率いるプロのシンクロチームが、大分県の11箇所の温泉でシンクロを披露した。